こんにちは、Takamiです。
今回のテーマは、アルコールはどの程度筋肉を分解するか?です。
飲みたい人も、飲みたくない人も知っておきたい事実
トレーニングをしている人なら、一度は耳にしたことがあるはずです。
「お酒は筋肉に悪い」「アルコールは筋肉を分解する」──。
しかし、実際どの程度の影響があるのか?気になるけれど、なかなか明確な答えが見つからないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、アルコールの筋肉への影響を、論文データや作用機序をもとに深掘りしてみます。
結論から
いくつかの研究から、アルコールは筋タンパク質の合成(MPS:muscle protein synthesis)を低下させることが明らかになっています。
特に、トレーニング後の摂取においては、その影響が顕著です。
2014年に発表されたオーストラリアの研究(Parr et al.)では、筋トレ後にアルコールを摂取したグループとそうでないグループの筋タンパク質合成率を比較しました。
その結果、アルコールを摂取したグループではMPSが約24%低下していました。
つまり、筋トレをしてプロテインを飲んでも、その後にお酒を飲んでしまうと、せっかくの筋肉合成がかなり阻害されてしまうのです。
アルコールが筋肉に与える主な影響とメカニズム
1. 筋タンパク質の合成阻害
アルコールは、筋タンパク質の合成に関わる「mTOR」という経路を阻害します。
これは筋肥大を促進する上で重要なシグナル経路であり、ここが止まると筋肉は大きくなりにくくなります。
2. 筋分解(カタボリック)の促進
アルコールはコルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を増やします。
コルチゾールは筋肉の分解を促進するホルモンで、筋肉をエネルギーとして使ってしまう働きがあります。
3. テストステロンの減少
筋肉合成を助ける男性ホルモン「テストステロン」の分泌もアルコールによって抑制されます。
特に慢性的に飲酒している場合は、テストステロンの分泌低下が長期的な筋力低下につながる可能性があります。
どのくらいの量で悪影響が出る?
研究によると、「中等度〜大量の飲酒」で明らかな筋合成の低下が確認されています。
たとえば、Parrらの研究では、1kgあたり1.5gのアルコール(体重70kgの人でビール約1.5Lに相当)を摂取したときにMPSが24%低下しました。
つまり、普通に“酔う”レベルの飲酒は、筋肉にかなりの悪影響があるといえるでしょう。
しかし、軽度の飲酒(ビール1杯程度)では、そこまで大きな影響は見られないという報告もあります。
とはいえ、トレーニング後の数時間はできる限りアルコールを避けた方が良いことに変わりはありません。
どう付き合う?トレーニーとアルコール
「一滴も飲むな!」というわけではありません。
ただし、筋肉を効率よく増やしたいなら、以下のポイントを意識することをおすすめします。
● トレーニング後の数時間は避ける
筋肉の合成は、トレーニング後24〜48時間にかけて続きます。
特にトレ後3〜5時間は「筋合成のゴールデンタイム」。ここにアルコールを入れるのは避けたいところです。
● 飲むなら「オフの日」に
トレーニングをしない日に飲むことで、筋合成への悪影響を回避できます。
また、プロテインや食事で十分な栄養を摂っておくことも大切です。
● 水分とタンパク質を意識して補給
アルコールは利尿作用があるため、脱水も筋分解のリスクを高めます。
飲酒時はしっかり水分補給をし、できれば飲酒前後にプロテインを摂るのもおすすめです。
まとめ
アルコールは、たしかに筋肉にとってマイナスの要素が多いです。
特にトレーニング後に飲むと、せっかくの努力が水の泡になってしまう可能性もあります。
とはいえ、「飲まない人生なんて味気ない」と感じる方も多いはず。
そんな方は、“トレーニングと飲酒のタイミングをずらす”、“水分と栄養をしっかり摂る”といった工夫をしながら、賢くアルコールと付き合っていきましょう。
筋肉は、あなたの生活と健康の“資産”です。
それをどう守り、育てるかはあなた次第。
一杯のお酒が筋肉に与える影響、ぜひ知った上で選択していきましょう。
参考文献:
•Parr, E. B., Camera, D. M., Areta, J. L., et al. (2014). Alcohol ingestion impairs maximal post-exercise rates of myofibrillar protein synthesis following a single bout of concurrent training. PLoS One, 9(2): e88384.
•Barnes, M. J. (2014). Alcohol: impact on sports performance and recovery in male athletes. Sports Medicine, 44(7), 909–919.